駿馬京 『インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合』 (電撃文庫)

知りたかったのだ。

人々がインターネットの匿名性を利用して、他者を攻撃する理由を。

匿名の第三者に攻撃された当事者が立ち直る手段、取るべき行動を。

人気の女装配信者「神村まゆ」こと高校生の中村真雪は、SNSを経由したストーカー被害に悩まされていた。オープンキャンパスを利用して山吹大学社会学部教授、白鷺玲華に相談に訪れる。解決に協力することにした玲華と、その助手で大学生で姉崎ひまりは、インターネットを起点とした事件(インシデント)に巻き込まれてゆく。

現代インターネットが生み出した正義と明るい闇がもたらす新しい破滅の形、それとおねショタを描く、第27回電撃小説大賞銀賞受賞作。インターネットはともかく、社会学からアプローチしたライトノベルとは珍しいし、Twitter、LINE、Instagramほかインターネットサービスを実名で出すのも珍しい。

インターネットでやらかして炎上し、そのまま社会から居場所をなくした人々や、「無敵の人」をどのように扱えばいいのか。濃厚にして簡潔なおねショタを間に挟みつつも、かなりドロリとしている。クライマックスのもろもろは少し安直な解決だと思ったけど、ここでリアリティを突き詰めると希望も救いもない話にしかならなそうだしな……。あと、何の説明もなく「府内」とか書くのは京都出身作家あるあるだろうか。良いものでした。


インターネットは便所の落書きに例えられるけれど、落書きどころか便所そのものである。