紙城境介 『シャーロック+アカデミー Logic. 1 犯罪王の孫、名探偵を論破する』 (MF文庫J)

「これは模擬試験じゃない。本物の事件――本物の殺人だ。人が……死んでんだぞ」

「あー、うん……そだね」

「なのにさ、それを無遠慮に詮索するってことに対して、少しも疑問に思わないのか? なんでそんな、ただの学校行事みたいに――」

――ついて、いけねえ。

どうして簡単に適応できる? どうして不謹慎だとは思わない? 『俺たちは探偵学園の生徒だ』――そのたった一言で、どうして常識が吹っ飛んじまうんだ?

21世紀に入って四半世紀。前世紀末の探偵王と犯罪王の対決は、次の千年紀の行方を決定づけていた。世は犯罪全盛時代にして、探偵全盛時代。日本で唯一「国家探偵資格」を取得できる真理峰学園に、今年とある少年と少女が入学する。

未曾有の大探偵時代にして大犯罪時代。〈犯罪王〉の孫、不実崎未咲と、〈探偵王〉の娘、詩亜・E・ヘーゼルダインが探偵学園で相まみえる。“事件の手掛かりは、すべて太字で示される。”。「読者への説明書」から始まる、妙な古めかしさと新しさの同居した学園ミステリ。作者得意の、語り手を入れ替えつつ語られてゆく血の因縁、探偵学園という舞台を生かした密室事件と裁判対決、そもそもの、探偵という存在に対する違和感、やたらキャラクターの強い学生、探偵。あと言われて気づいたけど、「継母の連れ子が元カノだった」もこちらもおっぱいの描写多いですね。いろんなものがもりもりと盛り込まれた、これぞエンターテインメントといった佳作でした。ちょう楽しかったです。