岬鷺宮 『日和ちゃんのお願いは絶対4』 (電撃文庫)

まるで、景色の中に透き通っていくみたいに。世界全体に溶けていくみたいに。

彼女は触れがたいほどに透明に、清くそこにある――。

俺は、彼女が恐ろしかった。

そんな風に、純度を極限まで高めていく彼女に、恐怖を覚えていた。

――こんなものが、恋だろうか。

日和が呉から居なくなって数ヶ月。世界は確実に壊れつつあった。失われる「日常」を守るため、地域の小中学校や自治会と合同で文化祭を開催しようと準備する深春たち。そのさなかに、日和は再び現れる。

せめてもの日常を守ろうとする深春と、世界のすべてを諦めてしまった日和の「恋」。世界の終わりを描く直球のセカイ系ラブストーリー。「自分にできること」を精一杯やる、という意味では同じことをしていたふたりが、実はまったく別のものを見ていた、というすれ違うべくして起こったすれ違いだったのだと思う。自分が高校生活に感じていた空気は「セカイ系」で語られるそれに近いものだった、という作者があとがきで語る体感が興味深い。寂しさとか、何かしなきゃという焦燥感みたいなもの、だろうか。結末がどのようなものになるのか、見守りたいと思います。