香坂マト 『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います3』 (電撃文庫)

「死んだ人は蘇らない」

ギリ、と奥歯を噛み、アリナは絞り出すようにそう言った。

「だから、冒険者も受付嬢も、バカみたいに辛い職場で、バカみたいに必死に生きてんでしょう……!」

ギルドの受付嬢、アリナは今宵も終わらぬ残業に心ささくれさせていた。ギルドの働き方改革のアイデアを出した従業員には特別休暇を出す、というカウンター長の言葉に燃えるアリナは、カイゼンのヒントを求めて合同研修を受けることにする。かつてダンジョンがあった場所に建てられた研修棟には、おばけが出ると言う噂が広まっていた……

自分の仕事しか考えられなかったギルドの受付嬢は、はじめて職場全体を見つめなおすことになる。ギルドの受付嬢のお仕事物語、第三巻。数十年前の過去に囚われ、歪な執念しか見られなくなったとある人物と、受付嬢として生きることを決めたアリナ。対象的な描き方が象徴的で、素直に惚れる。呪いのような生き方であっても、その呪いこそが大事な大事な思い出。後悔も痛みも全部飲み込んで、生きてやる。ライトノベルでも屈指の、強い女性主人公ではないかと思う。一巻から長所がどんどん尖らせている感覚があり、巻を追って良いシリーズになっている。騙されたと思って読んでみるといいと思います。