円居挽 『誰が死んでも同じこと』 (光文社)

「捜査マニュアルの作成って……具体的に何をするの?」

「基本的には一般企業のそれと変わりませんよ。業務上のボトルネックを見つけ出し、改善するだけです。僕がまず手をつけたのは膨大な事件記録です。それらを丹念に洗い直したところ、重要なのは動機だったということが解りました。実に殺人事件の99・99%が動機のある殺人だったんですよ!」

「いや、それって……普通じゃない?」

日本を代表するコンツェルンの中枢、河帝商事。その名古屋支社長の長男が、自室で何者かに殺害された。わざわざ東京から駆けつけた警察庁の若い刑事、十常寺迅は、河帝グループの社員でグループの内状をよく知る灰原円を連れ立って捜査に乗り出す。その日から、日本全国の河帝の後継者が次々と殺害される事件が発生する。

巨大企業グループの創業家一族が抱えた闇と矛盾が、数十年の時間と殺人を経て明るみに出る。客観的に数値化された人間の価値を問う本格ミステリ。本格ミステリなんだけども、読み終わってみると「聖闘士星矢」のようななにかを感じる。手際のいい悪ふざけのような一冊でした。