長谷敏司 『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』 (早川書房)

――われわれの頭蓋の中にあるものは、つまりは、ただの内蔵にすぎない。

交通事故で右脚を失ったコンテンポラリーダンサー、護堂恒明は、知人の紹介でAI制御の義足を身に着けることになる。絶頂期を前に絶望に突き落とされた恒明は、リハビリと、右脚に宿ったAI義足という異種知性との対話と通じて、新たなダンスを表現しようとする。

ヒトのダンスとロボットのダンスを分ける、人間らしさはどこに由来するのか。脚を失ったダンサーとAI義足の共生、そして父と息子の対話から、人間性のプロトコルを探究する。10年ぶりの長編小説。ダンス、介護、AI。描かれるものすべてに、恐ろしいまでに力が入っている。この本から見出したものが、そのまま読者の属性になるのではないかと思った。鏡みたいな小説というのか。作者の知識と経験、問題意識が生み出した傑作だと思う。