――我々は〈はじまりの町〉という出し物を行う役者なんです。
MMORPG「アクトロギア」。サービス終了を約四ヶ月後に控えたある日、アクトロギアの〈はじまりの町〉の住人たちが、突然自我を獲得する。事情は分からないが、この世界はもうすぐ終わってしまうらしい。町長のオトマルは、秘書官のパブリナとともに、世界の終わりを阻止すべく行動を開始する。
どうやら自分たちの住むこの世界は「舞台」であるらしい。では観客はどこにいるのか? この世界は何者に創られ、なぜ終わらなければならないのか? 自我を得たNPCたちは考え奮闘する。作中人物が勝手に動いて、世界という舞台をなんとかする、文字通りのロールプレイ。星新一のショートショートにこういう話があったよね。世界はどのようになっているのか、その世界に産み落とされたNPCたちが、その法則を探究してなんとか動かしてゆく。その過程が、これぞという感じで楽しい。いかにもゲーム的な異世界ファンタジーかと思わせておいて、現代のSFならではのラストが用意されていたのも見事。ページ数の関係もあってか話がサクサク進むのも良い方向に作用していると思う。騙されたと思って手に取ってみるといい。良いものでした。