もちろん一生涯独身でいろというわけじゃない。
時が来れば、あいつに相応しい女は、私が責任をもって探し出す。
けれどそれは、間違っても京子なんかじゃない。
だから命じてやった。別れろと。
横暴だと思われるかもしれないが、衛を愛しているからこそだ。
ややあって「だってさあ」と続く。
「かわいそうじゃない。あの子」
「かわいそう?」
「生きづらそうなところが」
京子が「あぁ」と納得したように頷いた。
間もなく盆休み。衛と京子は一泊二日の旅行を計画していた。とはいっても、家出をずっと続けるわけにもいかない高校生の衛は家に戻ることにする。
姉の凛のDVから逃げ、想いを寄せていた幼なじみを振り、従姉で恋人の元アイドルと、祖母の家で暮らすようになっていた衛。真意がまったく語られなかった姉の事情がついに明かされ、愛が重たい少女たちとの関係にひとつの決着がつく、シリーズ最終巻。生きづらい人生を送ることになった衛、姉、少女たちの事情はある意味平凡で、予想を大きく外れたものではない。でも、ドラマチックとは言えない陳腐な結末も、この物語らしいと言えるのではないでしょうか。事情はなんとなくわかるんだけど、丁寧に描いてきた関係がここで駆け足気味にたたまれるのはもったいなく感じられた。次回作を楽しみにしています。