白金透 『姫騎士様のヒモ4』 (電撃文庫)

俺たちはたくさんの絆で結ばれている。一本一本は糸のように細くても、あちこちに絡みついて簡単にはほどけない。彼女と出会って一年と三ヶ月ばかり。時が経てば経つほどそいつは増えていく。増えれば増えるほど、がんじがらめになって身動きがとれなくなる。

そしていつか、俺たちの首を絞める時が来る。互いの首を絞め合う時が来る。

共に歩む限り、俺たちの運命は地獄への一本道だ。

それでも、俺とアルウィンの絆は、断ち切れない。

アルウィンの故郷から戻ってきた一行を迎えたのは、『スタンピード』が近いにも関わらず建国祭の準備に浮かれる「灰色の隣人(グレイ・ネイバー)」の姿だった。太陽神教団ソル・マグニが暗躍する迷宮都市に、滅びの時が近づきつつあった。

迷宮病を乗り越え、故郷から帰還したアルウィンとマシュー、そして迷宮都市の冒険者たちと、都市にはびこる太陽神教団の暗部の決着を描いたシリーズ第四巻。滅びを目前にした迷宮都市の姿と、そこに集う裏も表もある冒険者たち。アルウィンが「姫騎士」を名乗る理由に、命綱(ヒモ)とのがんじがらめの依存。たぶんだけど、今だからこそ描写に実感と重みが生まれた部分もあったのだと思う。ここまでの総決算にふさわしい、見事な第一部完だったと思います。でもまあ、本当の地獄はここからはじまるのかもしれませんね……。