凛華に限らず、誰もがそうなのだろう。
天才は天才なりに、凡人は凡人なりに、馬鹿は馬鹿なりに、どうでもいいことに悩んだり躓いたり。誰かにほんの少しの勇気を分けてもらい、「こんなに簡単だったのか」と、最初の選択肢に戻ってきてようやく気が付く。シンプルなのに複雑に考えてしまうのが人間。
だからこそ愛おしい。だからこそ生き甲斐がある。
合宿から帰ってきた凛華と天馬を待っていたのは、凛華の父だった。夏休みも終わり、凛華がピアノを披露する10月の星藍プロムナードコンサートまであと一ヶ月半。三角関係は結論を迎えようとしていた。
偶然に偶然が重なって、お互いが近くにいられたからこそ見えるものがあったし、一歩を踏み出すための勇気を持つことができた。「最も幸せなトライアングルラブコメ」が迎えた結末を描く最終巻。今巻ではピアノコンクールの独特の緊張感は素晴らしいものがあった。泥臭く積み上げてきたからこそ選ぶことのできたラストだったと思うし、この物語だから導くことのできた、幸せな人間讃歌だったと思う。お疲れ様でした。