五月雨きょうすけ 『クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所2 ~ダークエルフ先輩の寿退社とスキャンダル~』 (電撃文庫)

「カメラによって我らの価値観は一変する。天才画家が描いた精緻な絵画よりも真に近い……いや、真実を写し出す! カメラから生み出されるその絵の名を『写真』と呼ぶ!」

かかっていた布が取り払われた瞬間、長いスピーチに疲れ切っていた出席者達の目が見開かれた。

それまで見たこともないほど精密……いや、目に映った世界を切り取ってきたとしか思えないほどありのままに、女性の姿が写し出された絵――写真がイーゼルに架けられていた。

十七種族が生活する実験都市ミイスの結婚相談所〈マリーハウス〉は日々大忙し。ある日、興行師のハルマンによって新技術『写真』が大々的に発表される。新技術はあっという間に街に浸透し、大きな混乱をもたらすことになる。

「歪なものね。この街では食べ物も衣服も何でも手に入るのに、嫁一人もらうのが難しくてあなた方のような商売が成り立つのですから」

種族間戦争の終戦をきっかけとして、十七種族が生活する実験都市ミイス。唐突にもたらされた新しい技術によって、この若い街と人々の価値観は大きく変容する。思いもしなかった種族間の出会いに、結婚相談所を創設した所長と副所長の過去も語られる、異世界結婚相談所のドタバタを描いた第二巻。十七種族それぞれの間だけに通じる慣用句やタブーに、街における流行の熱狂と沈静化の過程、多様な文化が共存する街で軽々しく暴走する正義。他種族が共生する「異世界」、結婚相談所という価値観のすり合わせが何より求められる舞台を存分に、魅力的に活かした物語は読むところが多く楽しかった。まあ今回は小人族(ハーフリング)に押し付けすぎなのは気になったけど……。姿勢は一作目から一貫していた。もっと読まれていい作品だと思います。



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