石川博品 『明日の狩りの詞の』 (星海社FICTIONS)

明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)

明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)

いくつかのものが失われても、やがて世界の帳尻は合う。でこぼこな地面に雨が降ってなだらかになるように。

俺もいつか、いままでに殺した獲物たちと同じところに行く。殺すこと・殺されることは命どうしが出会うひとつの形だ。

もう狩りを恥ずかしいこととは思わない。ただ、仕留めた獲物の扱いをしくじることだけは恥ずかしい。あとでそいつらに文句をいわれそうだからだ。

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東京湾に落下した隕石の影響により,封鎖地区となった東京.「外来宇宙生物」たちの新たな生態系が築かれつつあったそこで,高校生の西山リョートは,相棒のカイたちとともに外来生物の狩りを行っていた.リョートたちはある日,ふたりのアンドロイドを連れた宇宙人のヘロンとともに狩りを行うことになる.

帯に曰く「青春狩猟物語」.あらすじを見て,モンハンのようなゲームを小説化した感じなのかな(最近よくある),と思っていたらまったく違っていた.当たり前か.というか,狩猟に関する一連の手続きや心構えをこんなにわかりやすく丁寧に書いてくれるとは思わなかったし,そのうえで狩猟と青春ものとの組み合わせがこんなに合うものだとは思わなかった.獲物に対する敬意だとか,狩猟を行うにあたっての験担ぎといったものがとても新鮮だし,作中で言われる「通過儀礼(イニシエーション)」に説得力が生まれる.友人たちとの馬鹿話だとか,団地のおじちゃんやおばあちゃんやガキどもだとかがいきいきしているのが良いよね.描かれる世界は限定的なのだけど,様々な広がりを感じさせてくれる魅力的な世界観であり,物語だと思う.楽しゅうございました.