ひたき 『双子探偵ムツキの先廻り』 (電撃文庫)

これは双子の探偵が行く先々で起こる事件を名推理で解決するミステリー。

などでは決してない。

吹雪に覆われた雪の山荘。ここにふたりの男女がぐうぜんたどり着く。睦月青士、睦月赤音。ふたりは、殺人事件を呼び寄せると噂される睦月家の双子の探偵だった。

コミュ力担当の赤音と、証拠集めと推理が仕事の青士。双子探偵の行く先では引き寄せられるように事件が起こる。雪山の山荘、遺産相続の話し合いの場となったホテル。しかし、この小説はミステリー、ではない。ミステリマニアもノックスの十戒も切って捨てる、先廻り探偵の事件簿。ミステリの「空気」を逆手に取った語り口は、スケールは小さい印象はあれど非常にまとまっている。狂言回しであるお嬢様探偵の八雲迷子の存在もあって軽快。アンチミステリとまではいかないけど、気軽に手に取ってみていいかもしれないです。