土車甫 『好きな子の親友に密かに迫られている』 (スニーカー文庫)

……ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。

あたしが欲しくても手に入らないものを、彼女は簡単に手に入れてしまう。

親友にこんな感情を抱いちゃだめなのに。

心の底から。彼女が恨めしい。

高校生の瀬古蓮兎は、中学からの同級生、夜咲美彩に惚れていた。ほぼ毎日のように告白しては撃沈する様子は、もはやクラスの名物として知られていた。そこに割り込んできて、美彩とあっという間に親友になった日向晴。いがみ合ったりいっしょに出かけたりする高校生三人の関係は、時間とともに変化していく。

第8回カクヨムWeb小説コンテストラブコメ部門特別賞。タイトルや表紙の印象に反して非常に初々しい三角関係ラブコメ、かと思いきや……。外見的にはそのままに、危ういバランスで成り立っていた三人の関係は、じんわりと熱を帯び加速してゆく。三角関係の話として特別変わったことを書いているわけではなく、なおかつこの巻はプロローグにあたる部分で終わっているのだけど、心情の変化をじっとりと丁寧に描いていて、イラストも含めてとても良かった。続きがとても楽しみです。