八目迷 『ミモザの告白4』 (ガガガ文庫)

ただ……それにしても、お兄ちゃんの反応は過剰だと思う。だって、冷静に考えれば分かることだ。男の子が男の子を好きになることなんて、普通ないのに。

槻ノ木汐の妹、操は、汐のことを軽蔑していた。昔は誰よりも慕っていた、たったひとりの兄。母がいなくなり、新しい母が来てもその関係は変わることがなかった。だがあの日、汐がセーラー服を着ている姿を目にした瞬間、かつての憧憬は消え去った。

兄が普通でなくなったのはいつだったのか、どこかに理由があったのか。汐は過去を振り返ってゆく。「家族」に焦点を当てた、シリーズ第四巻。崩れ去った兄への尊敬と軽蔑、父の再婚と新しい家族との出会い、母との死別。中学生から小学生、幼稚園児だった頃まで、妹の視点から遡って語られる家族の「愛しき日々」と、その後にやってきた現在について。

いつからか生まれていた違和感やズレ、いつの間にか「家族」を「聖域」と捉えるようになったことまで、細かいところまで丁寧に拾い上げていたと思う。白と黒のコントラストの強いイラストが物語をさらに引き立てていた。三巻までの物語を受けた上で、ある家族の肖像を、完璧に描いた一冊になっていたと思います。