凪 『人類すべて俺の敵』 (スニーカー文庫)

けれど、この聖戦にご都合主義は持ち込めない、皆が幸せになっての大団円はありえない。一人の少女が死ぬか、六十億人を超える人類が死ぬか、用意されて未来はそれだけだ。

魂が抜けたかのような不審死を遂げることから《魂魄剥離》と呼ばれる現象が人類を襲い始めてから一ヶ月、すでに八億人もの人間が命を落としていた。人類の前に現れた自称《神》は、この現象が人類滅亡を目論む《魔王》の仕業だと宣言する。

高坂憂人はただ独り、世界の敵に仕立て上げられた《魔王》に手を差し伸べる。六十億人の人類と《神》、選ばれし《天使》たちを向こうに回した聖戦が始まる。第28回スニーカー大賞受賞作。すべての人類を敵に回すたったひとりの《魔王》、それぞれの事情を胸に戦う《天使》と、それを俯瞰する《神》の群像劇という構図は仮面ライダーのそれに近いと思う。個人的にあまりストーリーには惹かれなかったのだけど、最初から最後まで情報がみっしり詰め込まれているので妙なお得感があった。