枯野瑛 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #8』 (スニーカー文庫)

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08 (角川スニーカー文庫)

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08 (角川スニーカー文庫)

「実際に虚偽か否かなど、凡俗の頭にゃァ難しすぎて、構ってられやしません。開け慣れた引き出しに収めて、知った気になれるかどうか。それがあたしらにとっての『ほんと』で、それ以外があたしらにとっての『うそ』だ」

〈十一番目の獣〉(クロワイヤンス)の打倒と英雄の誕生によって38番浮遊島は歓喜に沸いていた.その水面下で,終末は着実にリミットが迫っていた.明らかにされた滅びを避ける方法は,自分たちの手で浮遊大陸群(レグル・エレ)を破壊し沈めること.

最終章開幕.妖精たちの父親とひねくれ者の魔王,すでにこの世にいないふたりが,新しい世界を創造しようとする〈最後の獣〉(ヘリティエ)の前に現れる.終末を前にした世界を救うために何を犠牲にするのか,誰が手を汚すのか.現在と過去と未来と,オーソドックスで普遍のテーマを群像劇のような手法で語る.現代日本の問題を反映したのかな? と思しき描写が今までに比べても多めだったように思う.

世界を救おうとした「無私の聖人」の真の思惑と,それを許さないふたりの死者.〈十七種の獣〉もそうだけど,明確な「敵」というのとはまたちょっと違うんだよね.独特のストーリーテリングだよなあと改めて思ったことでした.