それはまるで、大好きで何度も繰り返し読んでいた本の中から、ずっと一緒に冒険をしてきた少女が飛び出してきたような感覚だった。
結局俺には、あの思い出を本の中に物語として押し込んでおくことなどできなかった。
魔法がこの世界へもたらされたのと同時に、「現実」と「物語」は混ざり合い始めたのだ。
元の世界に豚が戻ってから、もう会えないと思っていたジェスと再会してから一年。豚と美少女の最後の物語が始まる。
あれから一年後の東京、四年後のメステリア、×××年後の断章を描いてゆく、完結巻。筆はおかれるが、物語が終わったわけではない。問題はいくつもあるし、革命から数年程度で平和が来るわけでもなし。でも希望はいくらでもある。作中の言葉を体現するかのような、余韻とその後に想像の余地を残す、良いエピローグだったと思います。章ごとにミステリの仕掛けが施されているのも、最後まで楽しかった。お疲れ様でした。
俺は遂に、豚ではなくなってしまった。豚と少女の恋物語は今夜で終わりなのだろう。しかし見方を変えれば、大きな章が一つ変わるだけのこと。ここで突然道が途切れたりすることは絶対にない。
物語は終わらないのである。
これはきっと、俺たち二人が駆け抜ける長大な冒険譚の、始まりの物語だ。