「いい? アシュリー」アリナはにっこり笑うと、一言一言言い聞かせるように、アシュリーの目をのぞき込んでゆっくりと口を動かした。「世の中にはね、『ここに名前を書いて下さい』って元気な声ではっきり伝えても、次の瞬間平気で住所を書いてくるやつがいるの。人の話なんてなぁぁぁんにも聞いちゃいないのよ」
「えぇ……? いい歳した社会人が?」
「いいわよもっと言ってやりなさい」
ギルド本部に、イフール最大の新カウンターがオープンする情報を入手したアリナたちは、多忙なオープニングスタッフに引き抜かれないか戦々恐々としていた。そんなある日、アリナの弟、アシュリーがインターン生としてギルドにやってくる。
インターンとして仕事場に来た大学生の弟と残業したり、休日にケーキ屋デートをしたり、被りそうな新たな仕事から目を逸らしつつ、それなりに充実した日々。それと同時進行で描かれる大陸の危機と、冒険者たちの行き着く終着。平和でのんきでラブコメな前半から、どんどんと不穏な空気が濃くなっていく第八巻。アニメ化したからこそできた前後編だったと思う。ちょいちょい言ってるけど、令和のスレイヤーズになれるファンタジーだと思うので、アニメ化を機に読んでみるといい。
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