香坂マト 『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』 (電撃文庫)

――力がほしい。

なんでもいい。時を止める力でも、人知を超えた事務処理能力でも、なんなら無能な冒険者共に代わって私がボスをぶっ飛ばせるような力でもいい。

とにかくこの残業をなくせるならなんだっていい。強い力がほしい。

「全部ぶっ飛ばしてやるんだ……! 全部……!!」

ギルドで受付嬢として働くアリナ・クローバーは平穏を愛していた。終身雇用かつ毎日定時で帰れるために選んだ仕事だったのに、ダンジョンに現れたボスが原因で、ギルドに押しかける冒険者が急増して残業に追われる日々。平穏と定時を取り戻すため、アリナは単身ダンジョンへ向かう。

第27回電撃小説大賞金賞受賞。一攫千金を狙えるハイリスクハイリターンな冒険者ではなく、給料はそこそこでも平穏で終身雇用の受付嬢を選び、その立場を守るために戦う。いかにも現代的な、剣と魔法のお仕事ファンタジー&コメディ。なぜ必要以上に平穏を望むのか、理由付けがしっかりしているし、それをベースにした話運びも自然。無難にまとまっている印象が強いけど、悪くなかったと思います。