石川英輔 『亜空間不動産株式会社』 （講談社文庫）

亜空間不動産株式会社 (講談社文庫)

ひょんな幸運から亜空間に広がる広大な土地の第一発見者になった不動産屋．突如発生した「亜空間」の土地なだけに国有地ではない，かといって私有地として登記することは出来ない．商売で苦境に立たされていた彼はこの土地をどのようにビジネスに繋げるのか．
これはムチャクチャ面白かった．法や政治の抜け穴から群集心理まで，多彩な手法を駆使して描かれる社会科学シミュレーション．作者曰く"ハード・ビジネスSF"というけど SF 味はストーリーの取っ掛かりのみで，ビジネス小説の側面が強かったかな．序盤はもたもたした展開ながら，意外なアイデアが炸裂する中盤以降はジェットコースターのような島耕作ばりのサクセスストーリーが展開し，爽快のひと言．いかにもビジネス小説的なおっさん臭さが鼻につかないでもなかったけど，一気に読まされた．