- 作者: 志藤絢,文倉十
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2010/04/22
- メディア: 単行本
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「質問の多い子だね。……戦時中は英雄でも、戦争が終わったら、ただの悪魔なんだよ」
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ある王国の辺境の草原に,ひとつの小さな家があった.そこで暮らすのは,二十歳そこそこの,真っ赤な目を持ったひとりの女性と,十歳前後のふたりの男の子.姉と弟たちのような,あるいは母と息子たちのような関係の三人は静かに暮らしていた.
三人の優しいスローライフ.第 6 回スクウェア・エニックス小説大賞佳作を受賞したデビュー作.かつてあった戦争やそれぞれの過去,進行する革命も話の中に含まれてはいるけど,アクセント以上の意味はなく,三人(+α)がそこにいることだけが描かれるという,完全なる雰囲気(だけの)小説.一点突破の姿勢は嫌いじゃないんだけど,しかしやっぱり書き込みがぜんぜんなのよなあ.描ききれていない世界観はもちろん,そこそこシビアな舞台背景にも関わらず,物語の根っこにある性善説(この物語の一番のキーだと思う)が無根拠かつ呑気すぎたのがものすごく気になった.おかげで作中で起こっている(た)ことに説得力がまるでない.ゆるい/ぬるいにも程があるよ.