チャイナ・ミエヴィル/内田昌之訳 『言語都市』 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

「あんたも知っているだろう。ホストたちにとってゲンゴがどういうものなのか。彼らがことばをとおしてなにを聞いているのか。だから、彼らは自分が理解できることばを聞けば、それがことばだとわかるが、もしもそれが壊れていたら? 大使たちは共感的結合で話をする。それがわしらの仕事だ。もしもその結合が“あるけれどない”としたら?」ブレンは口をつぐんだ。「本来はありえないことだ。それが構造のなかにある。実は、これには中毒性があってね。ホストたちはそれに耽溺する。幻覚みたいなものなんだ、“あるけれどない”というのは。矛盾があることで彼らはハイになる。

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遥か遠い未来.辺境の惑星アリエカにつくられたテラ人の居留地エンバシータウンでは,複数の異星人たちが共存していた.ふたつの口から同時に発話する特殊な言語を持っているアリエカ人と意思疎通を図るため,人類はクローン技術を利用した「大使」を生み出し,エンバシータウンに駐在させていた.ある例外的な能力を持った新任の大使が就任したことをきっかけに,エンバシータウンに大きな動乱が訪れる.
ローカス賞SF長篇部門受賞作.ことばと思考が同義である異星人に,ホモ・ディアスポラとなった人類が及ぼした影響と変革について.全体的に分かりやすい話とは言えず,序盤が特に分かりにくいのだけど,ことば=思考=真実であることを,ある程度理解した時点から,ぐっと面白くなる.「嘘で真実を語る」人類と,真実しか話せないアリエカ人.「神の麻薬」であるゲンゴ.嘘祭.言語による教化の物語とも読めるので,ややもやもやがないでもないけど,ことばの役割というか機能というか,考えれば考えるだけ,ダイレクトに脳に刺激を受ける感覚がある.マジで.あと,ネタバレになりそうなので詳細は避けるけど,変化に伴う切なさが描かれる終盤が個人的に良かったところ.