入間人間 『デッドエンド 死に戻りの剣客』 (メディアワークス文庫)

デッドエンド 死に戻りの剣客 (メディアワークス文庫)

デッドエンド 死に戻りの剣客 (メディアワークス文庫)

柳原が側にいる限り、私は剣を捨てられない。

私の運命というやつを定めているのは、もしかするとやつなのかもしれなかった。

同時に入門し,ともに競い合った幼い頃からの同門にして,一度として敵うことのなかった仇敵との,最初で最後の真剣勝負.斬られたはずの私は,気がつくと決闘の直前にいた.斬り殺されるたびに時間が巻き戻される.私の剣があの男に届くまで.

宿命の相手を殺すまで,死んでも死んでもその直前に巻き戻される.あるひとりの剣客の奇妙な半生を描いた,少し不思議な時代劇風小説.死に場所を求めさすらううちに辿り着く場所は終わりなのか,始まりなのか.とある藤子・F・不二雄のSFを思い出した.

どこか煮え切らない印象の語りが,物語と素晴らしく噛み合っていたと思う.強く憎んでいるわけではなく,むしろ敬意と友誼すら感じさせる相手を,本気で斬り殺さなければならない,という感情の発露にぞくぞくする.男と男の決闘から始まる小説なんだけど,感情の表現には不思議と百合を感じた.入間人間の百合小説が好きならこれも読んでみるといい.とても良い小説でした.