九岡望 『言鯨16号』 (ハヤカワ文庫JA)

言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

「あのな、それは文字だ。俺が思うに文字は『言葉』じゃない」

「どういう意味です?」

「言葉は風にのるもんだ。人の口から出て音になって、そうして初めて意味を持つ。俺たちの言葉はそういう風にできていて、つまり、紙に書かれた文字には力が無い。標識とかと同じでただの記号だ。過去の、もう生きてない言葉ってわけだ」

言鯨(イサナ)によって創造された,砂に覆われた世界.人々は,言鯨(イサナ)の遺骸の上に作られた,15の鯨骨街で生活をしていた.骨摘みのキャラバンで学者になることを夢見ながら働いていた旗魚は,十五番鯨骨街の近くで運び屋の鯱と,憧れの歴史学者,浅蜊に出会う.

世界の神である15体の言鯨(イサナ)が復活する.人と蟲と砂,そして言葉で出来た世界の真実をめぐる冒険物語.活劇あり,巨大生物あり,世界の崩壊ありと,一本の長編ファンタジー映画を観たかのような気分.アクションは痛快で,真実は切ない.ちょっと前に読んだ「サムライ・オーヴァドライブ」もそうだったけど,エンターテイメントとして完成されていると思う.



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