- 作者: 松山剛,珈琲貴族
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/07/25
- メディア: 文庫
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「すべて、『盗作』だ」
「盗作?」
人気のベストセラー作家が、盗作。それも三冊全部。
「これだけじゃない。奴がこれから出版するであろう三十五冊もすべて盗作だ」
ある偶然から「エウロパ事件」の犯人にたどり着いた大地と星乃.「エウロパ」こと井田正樹は,オンラインゲーム「GHQオンライン」に取り込まれ,廃人になっていた.
現在に絶望し,ここではないいつかの時間へ行く.じゃあ捨てられた「現在」には何が残るの? 三巻が「自分が切り捨てた過去がどうなるか」を描いた話だとしたら,この四巻は「自分が切り捨てられたらどうなるか」を描いた話になっている.タイムリープものにつきまとう,それでいて忘れられがちな問題を,はっきりした形で浮かび上がらせる.
「大流星群」と呼ばれるテロとその真犯人と言われる「ガニメデ」,宇宙から届いた暗号データ,未来から来た盗作犯,少女を殺すネットとマスコミの好奇心と悪意,人生という名の物語.「夢」と「宇宙」がテーマと言いながら,いくつもの事象が並行して描かれていく.語れば語るだけ謎が増えていくため,正直とっ散らかっている印象もあるのだけど,なんというか,ひとつひとつのテーマについてとても真摯に考える姿勢がほの見える.まだまだ方向はまったく見えていないのだけど,引き続き追いかけたいと思っています.
ネットで浴びせられる匿名の悪意の矢。
リアルで浴びせられる匿名の好奇の目。
地球人は同じなのだ。私たちを的にして、なじり、罵り、見世物にして、最後はボロ雑巾になるまで消費し続ける生命体なのだ。地球上の知的生命体にはそうしたモラルと自制心が欠如しているのだ――私はすべてを理解した。だから、この日を境に地球人を信じないことにした。信じられるのはなくなったお父さんと、今ここで眠るお母さんだけだ。だから地球人には一切笑顔を見せないことに決めた。