駿馬京 『インフルエンス・インシデント Case:02 元子役配信者・春日夜鶴の場合』 (電撃文庫)

僕は……否、僕たちは『共感』の強さを知っている。

インフルエンサーは共感の上に成り立つ存在だから。

自分のことを受け入れてくれる人がいるからこそ、存在意義が得られる。たとえそれが逸脱したコミュニティであっても、心の安定を得られるならば、それに縋りたくなると思う。

山吹大学社会学部の白鷺玲華教授に新たに相談を持ちかけてきた少女、春日夜鶴。「春日夜鶴は炎上を呼ぶ」。かつて人気子役として名を馳せ、今ではティーンに人気の配信者である彼女は、SNSに広がる噂に悩まされていた。

京都を舞台にした、インターネット社会学小説の第二巻。配信者を中心に、インターネットと社会の関係を描いてゆく。インフルエンサーは共感で食っている、そもそも人間にインターネットは早すぎる、みたいなタイムリーにして普遍的な導入から、事件は物理的に炎上する。一巻の時点でも思ったけど、現実のインターネットも社会も人間関係も、きれいに決着、とまではいかなくても、区切りがつくこともあまりないよね。簡潔でわかりやすい文章ですらすらと読める、キャラクター小説の革を被った、きれいなフィクション。現代的で非常に身近なだけに、事実は小説より奇なりを心から実感できる、稀有な小説だと思う。良かったです。



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