二月公 『声優ラジオのウラオモテ #11 夕陽とやすみは一緒にいられない?』 (電撃文庫)

歌種やすみは、夕暮夕陽をずっと追いかけていた。

彼女は今頃、千佳の背中が近付いたことを喜んでいるかもしれない。

けれど、追われる身としては――。

「あぁ――――――」

――これ以上ないほどの、恐怖だ。

高校三年の一月。卒業と変化、番組改編の季節。すれ違っていた由美子と千佳のふたりは、お互いの進学先を聞けずにいた。声優業界に居続けるとしても、同じ高校の同じクラスという環境からの卒業に漠然とした不安を覚える由美子。そして、千佳は由美子の成長に焦りを感じ始めていた。

受験、高校卒業と大学進学。先輩たちを追う立場から、後輩たちに追われる立場へ。人生の大きな節目に、「成長」と「変化」を重ね合わせて切り取った11巻。学校という、特別で特殊な環境と、声優業界というこちらも特殊な社会の、似たような大きな違い。自分は前に進んでいる、でも前に進んでいるのは自分だけじゃないという恐怖。やっぱりノリノリで書いてるよね。青春ものでアイドルもので、なおかつお仕事小説に求められるものをすべて詰め込んだような小説だと思ってます。



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