長山久竜 『星が果てても君は鳴れ』 (電撃文庫)

「お前らが音楽の力を信じなくて、どうすんだよ」

人はそれを、希望と呼ぶ。

希望には、人を変える力があると誰かが言っていた。

人間のあらゆる営みから受け取る、共感覚のようなノイズに侵され続けていた月城一輝は、自死を決意する。学校を辞め、まさに線路に飛び込もうとしたその時、眼の前に突然現れた少女に止められる。少女は元国民的女優の星宮未幸。未来視ができるという未幸は、一輝の自死を止めるため、九ヶ月の同居生活を持ちかける。

家族を失い、将来の夢を失った少年と、元国民的女優の少女の出会いと同居生活とその結末、その後の未来。第30回電撃小説大賞銀賞受賞。難病ものであり、ボカロ小説であり、舞台である名古屋の実在スポットも多々登場する、名古屋小説とも言える青春小説。世代的にターゲットではないんだろうなと思うところも正直多いんだけど、読むべきところもそれ以上に多いと感じた。自分には思いつけない未来視の使い方や、一章と最終章がきれいに繋がり、タイトルの意味がわかる構成に、たんたんとした日記形式で挟まれる心情のゆらぎも良い。なんというか良い意味での新人賞らしい小説だったと思います。