橋本和也 『世界平和は一家団欒のあとに4 ディア・マイ・リトルリトル・シスター』 (電撃文庫)

超常能力を持った家族の物語.朝起きたら姿だけでなく記憶まで小さな子どもになっていた長女・彩美のお話.サブタイからク・リトル・リトルを連想したのは私だけではないはずだ.
ここまでは出番が少なく,「働く女」くらいしかイメージのなかった 25 歳の長女にスポットを当てて描く.語り手を変え時間を変え,彩美のさまざまな姿を織り込むように見せる手法で家族にも分からなかった彩美の姿を浮き彫りにしている.クールなようでいて,その実とっても不器用,そしてカッコイイ女.過去の出会いと別れやその生き様を多面的に見せてくれるからこそ,子どもの視点から素直な気持ちを吐かせるという常套手段にもグッときた.

「だって、あたしおねえちゃんだもん」

世界平和は一家団欒のあとに〈4〉ディア・マイ・リトルリトル・シスター (電撃文庫) - はてなキーワード

そしてその直後に告げられる,まったく相反する「宣言するような、誓うような、確固とした意志」(261 ページ).不器用なまま大人になった不器用な子どもの願いはやっぱり不器用なものだったけど,そんなものは関係なく,見つめてくれる,支えてくれるひとはどこかに確実に存在する.そのことに救われる想いで読んだ.今回もすっげー良かったです.