大森望責任編集 『書き下ろし日本SFコレクション NOVA1』 （河出文庫）

NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫 お 20-1 書き下ろし日本SFコレクション)

北野勇作 『社員たち』

得意先から戻ってきたら会社が地中に沈んでいたでござる．いつも通りの北野勇作といった感じの掌編．それにしても「どうぶつ図鑑」そんなに売れてなかったのか……．

小林泰三 『忘却の侵略』

「記憶できない」存在との戦いを，ミステリ風に．ラストで素直にいやーな気分になった．

藤田雅矢 『エンゼルフレンチ』

深宇宙へ旅立ったあなたとわたし．『ほしのこえ』みたいな，ロマンチックだけどそんなんでいいのかお前ら，的なテイスト．

山本弘 『七歩跳んだ男』

月面基地を舞台にしたミステリ．月にまつわる陰謀論をベースに敷いているためか，どうも新鮮さに欠けるというか．

田中啓文 『ガラスの地球を救え！』

読み終わってこりゃ傑作だと思ったものの，会うひと会うひとことごとくラストがひどいというので，ファン交から帰ってきてから読み直したらやっぱり傑作だった．私には SF マインドが足りないようです．

田中哲弥 『隣人』

迷惑で不気味な隣人が生活に侵略してくる．侵略ホラー（？）．生活圏が得体の知れないものにじわじわ食われていく生理的嫌悪感とスカトロ・カニバリズムの合わさった気持ち悪さよ．

斉藤直子 『ゴルコンダ』

ほんわかした．28 人の梓さんの織りなすお花畑が，脳内で半自動的に再生されてしまう．ぜひ SF 系ニコマス P の方に動画化していただきたい．

牧野修 『黎明コンビニ血祭り実話SP』

対既知外生命体殲滅部隊ジューシーフルーツ vs. 既知外生命体，夜明けのコンビニでの決戦．テキストによる現実改変を武器にした戦いをグロくグロく．

円城塔 『Beaver Weaver』

レイヤー構造の時空で戦争をしているらしいスペオペ的な何か．公理の樹状構造を囓り倒すビーバーがいるとイメージするだけで話がすごく分かりやすくなっている気がする不思議．

飛浩隆 『自生の夢』

テキストを破壊する怪物忌字禍と戦うため，稀代の殺人鬼間宮潤堂は収集されたテキストから再生された．生み出された言葉とそれを認識して綴られる何か．広がるイメージが美しい．今回のベストだと思う．

伊藤計劃 『屍者の帝国』

伊藤計劃の第四長篇の未完のプロローグ．なんとかパンク．完成していたらものすごいバカ SF になっていたんじゃないか．