エリック・ガルシア/土屋晃訳 『カサンドラの紳士養成講座』 (ヴィレッジブックス)

カサンドラの紳士養成講座 (ヴィレッジブックス)

カサンドラの紳士養成講座 (ヴィレッジブックス)

なぜこんなに面倒なのだろうか。満たされた気持ちにしてくれて、夜遊びから帰って便器を抱えているときにいやな顔せずに髪の毛を押さえてくれて、女性向け映画を観ようと女友だちを家に呼んでも文句は言わないし、週に一度か二度はお手製の料理でもてなしてくれるような人を見つけるのに、どうしてこんなに時間と労力を割かなくてはならないのか。さらに急所を突くと──性愛に目覚めて(それから休眠、再度目覚めて)十五年、鎖と紐でトイレにつないでおく以外、男を家に引き留めておく方法が見つからないのはなぜ?

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カサンドラ・フレンチは 29 歳独身,ハリウッドのスタジオに勤務する弁護士.彼女の家の地下室にあるフィニッシングスクールでは,三人の「子どもたち」を紳士にするためのレッスンが夜な夜な開かれているのだった.
いい男がいないなら調教すればいいじゃない.独身女たち三人が恋に仕事に好き勝手やりながら空回りする「セックス・アンド・ザ・シティ」風ドタバタ小説,プラス「一人前の男」養成監禁調教小説.ハリウッドスターのジェイソン・ケリーが登場し,カサンドラがいろいろやらかしはじめてからが本領.頭が空っぽな友人に振り回され,家から離れられない母親に翻弄され,「子どもたち」との蜜月の日々の結末はいかに.こんな話なのにエロやグロが最低限に抑えられている(カサンドラも「セックス絡みではない」と言っており)のが,素直なコメディになっているんだけどまた妙な味も生んでいる.やあ,頭から尻尾まで,心底ひどい話でありました(褒め言葉).拉致監禁に興味のある紳士淑女の皆さんは読んでみるといいかもしれませんよ.