林譲治 『進化の設計者』 (早川書房)

進化の設計者 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

進化の設計者 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

世界中で異常気象が頻発する 2036 年.並行して進む三つの事件を繋ぐ謎が明らかになるとき,驚愕の真実が明らかになる.技術の進歩と社会構造の複雑化と環境の変化が進化の可能性に及ぼす影響について.
社会科学・生物学・気象学と多岐に跨るハード SF.盛り上げるだけ盛り上げといてラストはあっさり片がつくのは惜しいけどそこに至るまでの三者の過程は抜群に面白い.身近な社会の変化とぬこたちがホラーじみた姿を見せた拓海のパートがいちばん面白かった.いちばんハード SF から遠いパートかも知らんけど.三つの事件がスムースに重なりあうわけではないためか,ちぐはぐな印象も多少あったかな.タイトルにある「設計者」云々はむしろ飾り,2036 年のシミュレーション小説としての側面が強かったけど私はじゅうぶん楽しかった.