星家なこ 『蒼月のイリス』 (MF文庫J)

蒼月のイリス1 (MF文庫J)

蒼月のイリス1 (MF文庫J)

「ふっふっふ。まあ、そういうことになるかもしれんな。どのような彫刻や宝石よりも、女の裸のほうが美しいから興味があるというのに間違いはないが……それよりも、他の女の裸を見たら自信がつくのだ」
「どんな?」
「私の裸のほうが何百倍も美しい」

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あらゆる願いを叶えることのできる王の力,"一色"をめぐる戦いがあった.渦中のひとり,桐生慎太郎は同じく参加者の相馬香澄から逃げる最中に月の女神を名乗る少女,イリスと出会う.
MF文庫J ライトノベル新人賞佳作でデビューした作者の三作目(四冊目).限定された空間を舞台に演じられるかのような独特の雰囲気を出しながら話はバリバリの異能もの,というこれまでの特徴はそのままに,いくらかラブコメ寄りになった感じ.話の魅力の八割を占めるのはヒロインのイリス.なんだけど,神で女王で猫で処女プラスアルファと,多様な側面を持たせすぎたせいか,キャラクターが固まりきっていない印象が強かった.ちとちぐはぐというか.読み終わってから考えたんだけどたぶん他のライトノベル(作者)なら一要素につき一ヒロインを出してくる類の話なのかもしれない.そういう意味ではチャレンジャブルなのか? まあ個人的には少ないキャラクターに注力してくれるほうが好ましいと思っているしこれはこれで悪くはない.巻を重ねれば良くなってきそうな雰囲気は十分にあるんで,続きが出るなら楽しみにしたいです.