秀章 『脱兎リベンジ』 (ガガガ文庫)

脱兎リベンジ (ガガガ文庫)

脱兎リベンジ (ガガガ文庫)

けれどもう兎田には、それはできない。なぜなら、世界に喧嘩を売っている人たちと出会い、そしてそんな人たちのことを美しいと思ってしまったから。憧憬と羨望を抱いてしまったから。今まで散々自分を物笑いにしてきた連中を、全員見返してやりたいと望んでしまったから……。
「──……いいんですか? “復讐心”なんて、邪な感情で動いても」
「復讐心のどこが邪だ! 人を突き動かす感情で、これほど純粋で健全なものはない!」

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宇宙人と揶揄され,友だちのいない高校生,兎田晃吉.軽音楽部に所属しながら,ひとりだけバンドにもいれてもらえず,練習器具も貸してもらえない.ひとりで練習をしていた晃吉は,漫研部長の兎毛成結奈に偶然見られしまう.
完全に負け犬になっていた軽音部員とひとりだけの漫研部長.二羽の兎の出会いが復讐のきっかけとなる.クソッタレな世界をねじ伏せろ.第 5 回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞受賞作.何らかの才能を持ちながら,事情があって十全に発揮できない変わり者たちが,協力して「世界への復讐」を目指す,というテーマは『こうして彼は屋上を燃やすことにした』が近いかな.しかしアプローチはわりと対称的で,こちらは挫折と成長をかなり愚直に泥臭く描いている印象.言い方を変えれば「ベタ」になるんだろうけど,真っ直ぐな主張がなんともガガガ文庫らしくない.粗い部分もあるけど,かなり好みの一冊でした.今年のガガガ文庫の新人賞ではいちばん好きかもしれない.