小泉陽一朗 『ブレイク君コア』 (星海社FICTIONS)

ブレイク君コア (星海社FICTIONS)

ブレイク君コア (星海社FICTIONS)

暗転。
終了。
そうはいかないのが人生だ。
これからは人生と書いて最悪と読もう。

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ある雨の降る日.福島の田舎に住む高校生,入山優太は,雨のなか自分の自転車を踏み続けるブレイクコア好きのポニーテール,飯田いくみに恋をした.入山のアプローチの結果,ふたりはいっしょに帰る程度に仲良くなる.そんなある日の帰り道.歩道に乗り上げてきたトラックに飯田が跳ね飛ばされる.救急車で運ばれ目を覚ました飯田は,別人のようになっていた.
肉体と魂がちぐはぐになってしまったふたりの恋愛の行方.第 1 回星海社FICTIONS新人賞受賞の青春小説.テンポよく進むテキストで,章ごとに入山と飯田の交差する視点が描かれる.若い頃の佐藤友哉がこんな感じじゃなかったっけ? 内面をかなり正直かつ素直にさらけ出していると思うのだけど,どうも共感できない部分が多く,なんとも気持ち悪い.良い悪いではないし,気のせいかもしれないけど,現代的というか,ポストゼロ年代的(?)なメンタリティを感じた.それなりに葛藤もするのだけど,悩むより結論を出すことを急ぎたがる入山のメンタリティが非常に「らしい」な,と感じたので.いろんなひとの感想を聞いてみたくなる.
三分の二を経過したあたりから急加速する物語や,「殺人コア」といったアイデアも面白くて強く惹かれた.読後感は間違いなく青春小説.良かったです.作者は武蔵美に在学中で,自主映画を制作したりしているとのこと.この作品は映像化しないのかな.