今回、登場人物の環境や生い立ちを描くにあたり、本文中に現実世界に起こりうる暴力が出てきます。読むにあたってそれらの描写が負担になるようでしたら、どうかご自身を労ることを優先していただければ幸いです。
異世界からこちらの世界に、学ランを纏った使者の兄が現れる。使者の兄は、異世界の支配者になった
だって私は、もうとっくに「素敵なお姉さん」になる気はなくなっている。
女じゃないと褒められて、男社会の仲間に入れてもらえることが嬉しくなっている。
貶められるのが嫌でもがいてきたはずなのに、いつの間にか貶める側になっている。
もう手遅れなのだ、私はきっと。
魔法なんかなくても、現実世界で最強だったはずの最愛の姉は、なぜ異世界に行ったのか。そう生まれただけで、軽んじられ、搾取され、騙される。目に見えない圧力のある現実ではあまりにも生きにくい女性や子供にとって、男尊女卑が社会システムに組み込まれた異世界や魔法とはどういう意味を持つものなのか。てっきりタイトル詐欺になるのかと思いきや、一周回ってタイトル通りの話に戻った。一巻と同様、かなり読みにくい小説ではあるんだけど、決してやりやすいとは言えないテーマに真摯に向き合い、正直に描いていると思う。冒頭に引用したまえがき(作者プロフィール欄)といい、結構な問題作なのではないでしょうか。あとがきが存在しないのだけど、ここで完結なのかな。続編か新作になるのかわかりませんが、引き続き応援したい所存です。
kanadai.hatenablog.jp