二月公 『声優ラジオのウラオモテ #07 柚日咲めくるは隠しきれない?』 (電撃文庫)

「……わたしも、声優になれるのかな」

呟いた言葉は、本当に思いつきだ。

なんとなくの、深い意味のない独り言。

けれど、それはどうしようもないほどの興奮をもたらし、心臓が凄まじく高鳴る。

世界中のどんなことよりも魅力的に感じた。

声優、柚日咲めくる。ラジオでのトークを主戦場にしてきた彼女だったが、オーディションで本気を出すことができず、声優としての限界を迎えつつあった。

自分も、夢見る少女でいたほうが幸せだったのではないか。

声優への憧れを持ったまま、何も知らずにサイリウムを振っていたほうが。

そうすれば、こんなふうに苦しまずに済んだのに。

「これは声優ファンの少女、藤井杏奈が、声優、柚日咲めくるを認めるまでの物語」。六巻の時系列の裏で起こっていた、柚日咲めくるの葛藤と成長をもうひとつの視点で描いた第七巻。登場時から存在感の強かっためくるちゃんを掘り下げる。声優が好きすぎて、いろいろ面倒くさい声優になっためくるちゃんのいい子っぷりがとても良い。本筋を描きつつ、一方で人間関係の掘り下げも非常にうまくいっていたと思う。内容を凝縮させたイラストもとてもいいですね。ここまでの集大成みたいな巻だったと思いました。



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