比嘉智康 『命短し恋せよ男女』 (電撃文庫)

「わたしね、幼いときから。出会ったばかりの人からは特に、内面的なことをね、褒められがちなんだ。ほのかちゃんはまだ小っちゃいのに、病気と闘っていて偉いね。病気に負けないで強いね。…………でもわたし、なにも偉くなんかないし、強くなんかないのに。こうとしか生きられないから、生きてるだけなのに」

「…………」

こうとしか生きられないから――。

ふんわりしたほのかの声で聞いたその言葉は、俺の心に永く残るだろうなと思えた。

「全身性免疫蒼化症」で余命一年を告げられた中学生の石田好位置は、入院した病院で恋に恋する少女、穂坂ほのかと出会う。子供の頃から病院で過ごし「ひとりぼっちだったと思われて死にたくない」と言うほのかのため、好位置はふたりでカップルYouTuberの活動を始める。

僅かな余命のもと、カップルYouTuberとして創造と執念の中で生きていた。全員余命宣告済み、病院で繰り広げられる中学生たちの四角関係ラブコメ。主人公たちを中学生にしたのが非常に良い塩梅だったと思う。ヒトとして未成熟だし、死への実感が薄いためか、悲壮感が弱く、それでいてしっかりとした生命力がある。なんというか、テーマの割に良い意味で「普通」のラブコメだった気がする。都合よく解決したようなラストから、まだ二転三転はありそうに思えるけどどうだろう。期待しています。